2026.9.25

【コラム】相続土地国庫帰属制度とは?申請の半数が却下される理由と境界確定の重要性|福岡の土地家屋調査士が解説

⚠ 申請の約半数が却下・不承認に。最大の原因は「境界が明らかでない土地」です
相続 / 国庫帰属 / 境界確定 / 土地家屋調査士

相続土地国庫帰属制度とは?
申請の半数が却下される理由と境界確定の重要性

相続したけれど使わない土地を国に引き取ってもらえる制度。しかし「申請すれば必ず通る」わけではありません。承認されるためのポイントを解説します。

「相続した田舎の土地を使う予定がない」「管理もできず固定資産税だけ払い続けている」——そんな悩みを抱える方が増える中、2023年4月に始まった「相続土地国庫帰属制度」への関心が高まっています。しかし実際には、申請しても約半数が却下・不承認になっているという実情があります。

相続土地国庫帰属制度とは、相続または遺贈で取得した土地を、一定の要件を満たせば国に引き取ってもらえる制度を指します。承認されるための最大の壁が「境界が明らかでない土地」であり、ここで力を発揮するのが土地家屋調査士です。申請を検討している方は、まず土地家屋調査士 山本事務所へお気軽にご相談ください。

📋 この記事でわかること

  • 相続土地国庫帰属制度の基本と利用実績(申請件数・承認率)
  • 申請が却下・不承認になる10の理由
  • 最大の壁「境界が明らかでない土地」への対処法
  • 負担金(申請にかかる費用)の目安
  • 申請の流れと、申請前に確認すべきチェックポイント

1. 相続土地国庫帰属制度とは|利用実績と承認率

相続土地国庫帰属制度は、相続した土地が管理されず放置されることで将来「所有者不明土地」が増加することを防ぐために、2023年4月27日に始まりました。相続または遺贈で土地を取得した相続人が、一定の要件のもとで土地を国に引き渡すことができます。

4,556件

申請件数

2025年9月末時点。宅地・田畑・山林など幅広く申請されています。

約2,000件

帰属(承認)件数

申請のうち国への帰属が認められた件数(2025年9月末時点)。

約47%

承認率

申請しても約半数は却下・不承認・取下げになっています。

⚠ 「申請すれば引き取ってもらえる」わけではありません

承認率が約半数にとどまっている最大の理由は、申請の要件を満たさない土地が多いことです。特に「境界が明らかでない土地」は申請の入口で却下されてしまいます。事前準備が承認を左右します。

2. 申請が却下・不承認になる10の理由

引き取ってもらえない土地には、大きく分けて「申請自体ができない土地(却下事由)」と「申請はできるが承認されない土地(不承認事由)」の2種類があります。

申請ができないケース(却下事由)

A

建物がある土地(未登記建物を含む)

B

担保権や使用収益権が設定されている土地

C

他人の利用が予定されている土地

D

土壌汚染されている土地

E

境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地(← 最も多い却下理由)

承認を受けられないケース(不承認事由)

A

一定の勾配・高さの崖があって管理に過分な費用・労力がかかる土地

B

管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地

C

除去しなければ管理・処分できない有体物が地下にある土地

D

隣接地所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

E

その他、通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地

💡 「建物がある土地」も却下対象——解体と滅失登記が必要

未登記建物を含め、建物が残っている土地は申請できません。建物を解体し、建物滅失登記(土地家屋調査士の業務)を済ませる必要があります。

3. 最大の壁「境界が明らかでない土地」|土地家屋調査士が解決できること

却下事由の中でも特に多いのが「境界が明らかでない土地」です。長年放置された土地や、古い測量図しかない土地、境界標(杭)が失われている土地は、そのままでは申請できません。

境界が明らかかどうかは、法務局の登記事項証明書や地図だけで判断することが難しいケースも多く、土地の筆界に関する専門知識が必要です。ここで土地家屋調査士の出番となります。

🔧 土地家屋調査士にできること

① 現地調査で境界標の有無・状態を確認 ② 隣地所有者との立会いのもとで境界を確定(境界確定測量) ③ 境界標を設置し、申請に必要な図面・写真を作成——これらにより「境界が明らかな土地」として申請できる状態を整えます。

⚠ 隣地との境界協議は慎重に

法務局から隣地所有者に通知される回答書に「境界について異議がある」と回答されると、争いがあるものと判断され却下・取下げになりかねません。境界協議は隣地所有者の心情にも配慮した丁寧な進め方が必要で、専門家が間に入ることでトラブルを避けながら進められます。

📞 「相続した土地を手放したいが、境界が不明確かもしれない」

申請前の境界確認・現地調査からご相談いただけます。相談無料。
092-922-4606

4. 申請にかかる費用|審査手数料と負担金

国庫帰属が承認されても、土地を無償で引き渡せるわけではありません。主に以下の費用がかかります。

費用の種類金額の目安
審査手数料土地1筆あたり14,000円(申請時に納付)
負担金原則として20万円(宅地・田畑・森林など種別・面積により変動)
境界確定測量費用
(必要な場合)
土地の状況により数十万円程度(土地家屋調査士へ依頼)
💡 負担金は「10年分の管理費相当額」が基準

負担金は、国が引き取った後に土地を管理するための費用として、おおむね10年分相当を納める仕組みです。土地の種別によって算定方法が異なるため、事前に確認しておきましょう。

5. 申請から国庫帰属までの流れ

1

事前相談

法務局(本局)で事前相談ができます。対象になりそうか、必要書類は何かを確認します。境界が不明確な場合は、この段階で土地家屋調査士へ相談しておくとスムーズです。

2

境界確定・必要書類の準備

境界が不明確な場合は境界確定測量を行います。申請書には、土地の境界点を明らかにする写真を添付する必要があります。

3

承認申請(審査手数料の納付)

必要書類を揃えて法務局に申請します。1筆あたり14,000円の審査手数料を納付します。

4

書面審査・実地調査

法務局の担当官が書類審査と現地の実地調査を行い、却下事由・不承認事由に該当しないかを確認します。

5

承認・負担金の納付・国庫帰属

承認されたら負担金を納付します。納付完了をもって土地の所有権が国に移転し、手続き完了です。

6. 申請前に確認しておきたいチェックポイント

以下のいずれかに当てはまる方は、申請前に土地家屋調査士へご相談ください。事前準備が承認率を大きく左右します。

✓
土地の境界標(杭)が現地に残っているか
→ 不明なら境界確定測量が必要です。境界が明らかでない土地は申請の入口で却下されます。最も多い却下理由です。
✓
その土地に建物(未登記建物を含む)が残っていないか
→ 建物がある土地は申請できません。解体と建物滅失登記(土地家屋調査士の業務)が必要です。
✓
隣地所有者と境界について争いがないか
→ 争いがある土地は対象外です。隣地との協議は専門家が間に入ることでトラブルを避けながら進められます。
✓
負担金・手数料の費用負担を把握しているか
→ 審査手数料14,000円+負担金(原則20万円)が必要です。無償で引き取ってもらえるわけではない点に注意しましょう。

国庫帰属の申請、まずは境界の確認からご相談ください

「相続した土地を手放したい」「申請できる土地か知りたい」という段階からお気軽にどうぞ。境界確定・建物滅失登記など、申請に向けた準備をサポートします。

📍 土地家屋調査士 山本事務所(福岡県筑紫野市)|福岡県内・全国対応

受付時間:平日 9:00〜17:00 / 相談無料

📖 用語解説

記事中の専門用語をわかりやすく説明しています。

1
遺贈(いぞう)亡くなった方が遺言書によって財産を渡すこと。法定相続人以外の第三者や団体に財産を渡す場合も「遺贈」といいます。相続が法律で決まった範囲の人に引き継がれるのに対し、遺贈は遺言書による意思表示による点が異なります。
2
境界確定測量(きょうかいかくていそくりょう)隣地所有者の立会いのもとで土地の境界を確定し、境界標を設置して正確な測量図を作成する手続き。土地家屋調査士の専門業務です。国庫帰属申請や土地の売却・分筆の前提となります。
3
筆界(ひっかい)登記された一筆の土地とその隣の土地との間の、法律上の境界線のこと。所有者同士が話し合いで自由に決められる「所有権界」とは異なり、公的に定められた境界です。筆界に関する専門家が土地家屋調査士です。
4
建物滅失登記(たてものめっしつとうき)建物を解体・取り壊した際に、登記簿上の建物の記録を消す手続きのこと。国庫帰属申請では建物がある土地は対象外のため、解体後にこの登記が必要です。土地家屋調査士の専門業務です。
5
負担金(ふたんきん)国庫帰属が承認された際に納める費用。国が引き取った後の土地管理費用として、おおむね10年分相当(原則20万円、種別・面積により変動)を納めます。

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