2026.6.5
【コラム】なぜ、登記が「義務」になったのか?
なぜ、登記が「義務」になったのか?
相続登記・住所変更登記の義務化、その背景と経緯
2024年・2026年に相次いで施行された登記の義務化。その背景には、日本全国に広がる深刻な「所有者不明土地問題」があります。
2024年4月に相続登記の義務化が、2026年4月に住所・氏名変更登記の義務化が相次いで施行されました。特に「親が亡くなったのに不動産の名義変更をしていない」「引越し後も登記簿の住所を更新していない」というケースが、今まさに義務違反となっているケースとして急増しています。
登記の義務化とは、不動産の相続や住所変更があった際に、一定期間内に登記申請を行うことを法律で定めた制度を指します。違反した場合は過料の対象となるため、該当する方は早めの対応が必要です。「うちは大丈夫かな」と気になった方は、相続診断士として相続全般のご相談をお受けしている山本事務所へお気軽にご相談ください。
1. 所有者不明土地とは何か|九州全土を上回る規模の問題
「所有者不明土地」とは、登記簿を調べても所有者がすぐに分からない、あるいは所有者が判明しても連絡が取れない土地のことをいいます。この問題の規模は、想像をはるかに超えるものです。
所有者不明土地の面積
2016年時点の推計値(2017年に所有者不明土地問題研究会が公表)。九州全土(約367万ha)を上回る広さに相当します。
全国の土地に占める割合
令和6年(2024年)の国土交通省調査による数値。国土の約4分の1が所有者不明の状態です。
所有者不明土地が生じると、さまざまな深刻な弊害が発生します。
【公共事業が進められない】道路整備や防災工事のための用地取得交渉ができず、地域のインフラ整備が停滞します。
【災害復旧が遅れる】東日本大震災(2011年)の復旧・復興の現場でも、土地所有者の特定が難航し、区画整理や集団移転が遅れるケースが続出しました。この問題が社会全体に強く認識された契機となりました。
【空き家・空き地の荒廃が進む】民間の土地取引や活用が進まず、管理されない土地が隣接地へ悪影響(雑草繁茂・倒壊リスクなど)を及ぼします。
2. なぜ「所有者不明」になるのか|2つの原因を分析
所有者不明土地がこれほど大量に発生した原因を分析すると、大きく2つに整理されます。
これまで相続が発生した場合でも、不動産の名義変更(相続登記)は「任意」でした。費用や手間がかかるうえ、しなくても直ちに不利益がなかったため「とりあえず後回し」にされがちでした。その間に相続が繰り返されると、名義は亡くなった方のまま、相続人は数十人以上に増えているケースもあり、調査だけで多大な費用と時間を要します。
引越しや結婚・離婚などで住所や氏名が変わっても、不動産の登記簿を更新する義務はこれまでありませんでした。そのため登記簿に記載された住所へ連絡しても所有者に届かない、という事態が日常的に発生していました。所有者不明土地の発生原因の約3割がこの住所変更登記の未了によるものとされています。
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3. 法改正への経緯|2021年の大改正から施行まで
所有者不明土地問題が社会的に深刻化するなか、2010年代後半から法務省・国土交通省など省庁を横断した検討が本格化しました。そして2021年(令和3年)、民法と不動産登記法が大幅に改正され、相続土地国庫帰属法も新たに制定されました。
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• 不動産登記法の改正
——相続登記・住所変更登記の義務化 -
• 民法の改正
——共有制度の見直し・相隣関係の整備など -
• 相続土地国庫帰属法の制定
——相続した不要な土地を国に帰属させる制度の創設
今回の改正では、単に義務化するだけでなく、手続きの負担を減らす仕組みも同時に導入されました。相続人が自分の名前を申告するだけで申請義務を果たせる「相続人申告登記」、引越し等の届出情報を活用して登記官が職権で更新できる「スマート変更登記」などがその代表例です。
4. 義務化の概要|何をいつまでにすればよいか
2つの義務化について、主なポイントを整理します。「過去の相続・引越しも対象になる」という点が特に重要です。
| 項目 | 相続登記の義務化 | 住所・氏名変更登記の義務化 |
|---|---|---|
| 施行日 | 2024年(令和6年)4月1日 | 2026年(令和8年)4月1日 |
| 義務の内容 | 相続を知った日から3年以内に相続登記を申請する | 住所・氏名が変わった日から2年以内に変更登記を申請する |
| 過去分の扱い | 施行前の相続も対象。 ★2027年3月31日まで |
施行前の変更も対象。 ★2028年3月31日まで |
| 違反した場合 | 10万円以下の過料 | 5万円以下の過料 |
| 負担軽減策 | 相続人申告登記(簡易手続き) | スマート変更登記(職権による自動更新) |
登記官からの催告に正当な理由なく応じない場合に限り、裁判所への通知が行われる運用とされています。ただし「放置してよい」ということではなく、対応が遅れるほど手続きが複雑になることもあります。早期の対応をおすすめします。
5. 今すぐ確認すべき3つのポイント
以下のいずれかに当てはまる方は、早めの確認・対応をおすすめします。
何年前・何十年前の相続でも対象です。2027年3月31日が期限のケースもあります。相続登記人が多い・遠方にいる場合ほど早めの動き出しが重要です。
2026年4月から義務化されました。過去の未更新分は2028年3月31日までに対応が必要です。「スマート変更登記」に事前登録しておくと今後の引越しのたびに自動更新されます。
世代をまたいで放置するほど相続人が増え、手続きは複雑・高額になります。早期に専門家へ相談することで、手間とコストを大幅に抑えられます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的アドバイスを構成するものではありません。個別の状況については、土地家屋調査士・司法書士・弁護士等の専門家にご相談ください。
参考:法務省、国土交通省、不動産登記法改正(令和3年)